配当所得と上場株式等の譲渡損失との損益通算(1)
確定申告の手続きを行うと、「配当所得(配当金)」と「上場株式等の譲渡損失」を損益通算することができます(以下、「配当所得と上場株式等の譲渡損失との損益通算」を「損益通算」と短縮します)。このページでは、損益通算の内容及び具体的な手続きについて紹介します。
配当所得については、先に「配当所得を申告しよう」をご覧ください。
※以下、わかりやすくするため、復興特別所得税の金額を省略します。
配当所得(配当金等)と譲渡損失との損益通算とは?
例えば、A証券会社に証券口座を持つ田中さんの年間譲渡損益が「30万円の損失」であり、その年にB工業から「10万円の配当金」を受取ったとします。
A証券口座:B工業
・株式投資・・・30万円の損失
・配当金・・・10万円の利益(税金2万円を納付済み)
・損益通算・・・20万円の損失(税金2万円が戻ってくる)
株式投資では30万円の損失、配当金では10万円の利益であるため、投資全体を考えると、トータルでは20万円の損失です。
しかし、配当金の場合は、源泉徴収税として、2万円を先に納付しています。配当金と譲渡損失の損益通算を行うと、この2万円が戻ってくる(還付される)わけです。
損益通算を行った後の残りの20万円の損失は、「譲渡損失の繰り越し」を行い、翌年以降の利益を使って相殺します。
損益通算の手続き(特定口座開設者)
1、損益通算のために用意するもの
特定口座年間取引報告書及び配当金の支払通知書
特定口座を開設している投資家であれば、毎年1月中旬から2月上旬に「特定口座年間取引報告書」が証券会社から送付されます(※もしくは証券会社のサイトでダウンロードできます)。
特定口座年間取引報告書には、「譲渡の対価の額(収入金額)」「必要経費又は譲渡に要した費用等」「所得金額」「源泉徴収税額」等が記載されています。
また、配当金を出している企業の株を保有する投資家であれば、「配当金の支払通知書」が届きます。この支払通知書には様々な種類があります。配当金計算書・配当金明細書・配当金支払明細書等の名前になっていますが、全て活用できます。その他、郵便振替支払通知書のコピーも代用可能です。
所得税の確定申告書(第一表・第二表・第三表)
株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(1面・2面)
所得税の確定申告書付表(1面・2面)
この書類はどれも税務署でもらえます。プリンタがあれば、国税庁のHPからダウンロードできます。
2、損益通算の作業手順
損益通算のための書類作成の流れを紹介します。
「特定口座年間取引報告書」と「配当金の支払通知書」のデータを用いて、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(1面・2面)」→「所得税の確定申告書付表(1面・2面)」→「所得税の確定申告書(第一表・第二表・第三表)」と順番に記入します。
ただし、証券会社1社のみの取引であれば、その証券会社が届けてくれる「特定口座年間取引報告書」を添付することで、「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の代わりになります(※2019年分の確定申告から添付が不要になりましたが、代わりにすることは、引き続きできるという意味です)。
したがって、田中さんのケースでは、「所得税の確定申告書付表(1面・2面)」→「所得税の確定申告書(第一表・第二表・第三表)」と順番に記入していきます。
3、所得税の確定申告書付表に記入する。
A証券会社(特定口座)の損益及びB工業の配当金額は次のとおりです。
A証券会社
・特定口座年間取引報告書(収入金額)・・・100万円
・特定口座年間取引報告書(取得費)・・・130万円
・特定口座年間取引報告書(所得金額)・・・△30万円
B工業
・配当金の支払通知書(配当金額)・・・10万円
30万円の損失は、特定口座年間取引報告書ではマイナスを示す「△」の記号がついています。しかし、確定申告書付表には△を付けないで金額をそのまま書きます。
確定申告書付表(1面)の記入例
「100,000」は確定申告書第三表「テ」へ、「200,000」は確定申告書第三表「72」に△をつけて、「0」は確定申告書第三表「73」へ、それぞれ転記します。
確定申告書付表(2面)の記入例
「200,000」は確定申告書第三表「95」へ転記します。
4、確定申告書の第三表へ転記する。
確定申告書付表1面・2面の金額を申告書第三表のそれぞれの項目へ転記します。
その他、「収入金額 ツ」の「100万円」は上記「特定口座年間取引報告書(収入金額)」の金額を記入しています。また、「分離課税の上場株式等の配当所得に関する事項」は、以下のように記入します。
申告書第三表の記入例(左側)
申告書第三表の記入例(右側)
5、所得税の確定申告書(第二表)の「所得の内訳」及び「住民税」欄を記入する。
申告書第三表に続いて、第二表も完成させます。所得の内訳では、収入金額及び源泉徴収税額を記入します。源泉徴収税額は、所得税15%、住民税5%です。所得の内訳に記入する金額は、10万円の15%、つまり15,000円になります。
また、申告分離課税を選択して損益通算を行った場合は、「所得の種類」の「配当」の文字を丸で囲みます。忘れないようにしましょう。
申告書第二表の記入例
住民税の「配当割額控除額」は、10万円の5%ですから、5,000円になります。
申告書第二表の記入例
6、確定申告書の第二表「源泉徴収税額」を第一表へ転記する。
最後に、確定申告書の第二表「48 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額の合計額」を第一表「48 所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額」へ転記します。
所得税の確定申告書を完成させ、確定申告を行うと「52 還付される税金」の金額が戻ってきます(※確定申告を行う方の状況により、その金額は増減します)。
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