前年の譲渡損失を本年の譲渡所得から差し引く

企業業績の変化で「V字回復」という言葉をよく聞きます。いつも黒字だった企業が一時的に赤字に転落し、その翌年(翌期)に黒字に回復する。

個人投資家でも、同様の現象が起きがちです。過去に「○○ショック」と「○○危機」、「○○崩壊」・・・といったパニック的な株価下落が発生した年は、どうしても年間成績が赤字になりやすいです。


ここでは、赤字になった年の確定申告で「譲渡損失の繰り越し」を行った投資家が、翌年に黒字に復活したケースを紹介します。

株の確定申告を行う前に確認しておくべきこと

1、全ての証券会社の特定口座年間取引報告書を手に入れる。

証券会社で口座を開設した時に特定口座を選択した投資家は、毎年1月から2月上旬にかけて、前年分の「特定口座年間取引報告書」が届きます。

郵送ではなくWEB閲覧を選択している場合は、証券会社のサイトへログインすれば、特定口座年間取引報告書がダウンロード可能となります。

特定口座(源泉徴収なし)の投資家や複数の証券会社で特定口座を開設されている投資家など、株の確定申告を行う方は特定口座年間取引報告書を全て手に入れてください。

株の確定申告の手続き

1、株の申告のために用意するもの

特定口座年間取引報告書

昨年1年間の合計金額が損益と共に記載されています。証券会社の利用が1社のみであれば、この書類を「所得税の確定申告書」に添付することによって、下記「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」に代えることが可能です。

このページでは、2以上の複数の特定口座を利用した投資家を対象としたサンプルを紹介します。しかし、1社のみの方は「計算明細書」の項目が不要です。飛ばしてご覧ください。

所得税の確定申告書B(第一表・第二表・第三表)

所得税の確定申告書B第一表所得税の確定申告書B第二表

所得税の確定申告書B第三表

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書(1面・2面)

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書1面株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書2面

所得税の確定申告書付表(1面・2面)

所得税の確定申告書付表1面所得税の確定申告書付表2面

この書類は全て税務署でもらえます。プリンタをお持ちであれば、国税庁のサイトからでも可能です(リンクをクリックしてください)。

前年の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書

前年の赤字を本年の黒字から差し引く場合、前回の確定申告の際に提出した「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」の控え(下書き)があると便利です。

2、特定口座年間取引報告書の数字を計算明細書へ記入する。

例えば、A証券会社(特定口座・・源泉徴収あり)で20万円の利益を得た投資家がいたとします。

A証券 損益 税金 確定申告
前年 20万円の損失 譲渡損失の繰り越し

の手続きを行った
本年 20万円の利益 4万円を

納付済み
今回の確定申告で

納付済みの4万円

の還付を受ける

この場合、A証券会社では、20万円の利益に対する税金4万円がすでに納付された状態となっています。前年が赤字ですから、本年の黒字から前年の赤字を差し引くと、20万円-20万円=0円となります。


今回の申告手続きを行うことによって、この4万円の還付を受けようというわけです。


特定口座年間取引報告書に記載されているA証券(本年)の金額は以下の通りです。

特定口座年間取引報告書サンプル
特定口座年間取引報告書(単位・・万円) 株式等に係る譲渡所得
等の金額の計算明細書
証券会社 A証券
収入
金額
50 譲渡による収入金額


小計(1+2)
取得
費等
30 取得費(取得価額)


小計(4から6までの計)
差引
金額
20 差引金額(3-7-8)
所得
金額
20 所得金額(9-10)


繰越控除後の所得金額

(11-12)

A証券会社から手に入れた特定口座年間取引報告書の金額をそれぞれ記入します

計算明細書 金額
収入

金額
譲渡による収入金額 50万円
小計(1+2) 50万円
必要

経費
取得費(取得価額) 30万円
小計(4~6) 30万円
差引金額(3-7-8) 20万円
所得金額(9-10) 20万円
本年度で差し引く株式等

に係る譲渡損失の金額
20万円
繰越控除後の所得金額 0

各項目の数字を「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」へ記入します。

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書の記入例(1面)

株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書記入例(1面)

「収入金額」の中にある「小計(1+2)」の金額「50万円」は申告書第三表「ツ」へ、「所得金額(9-10)」の金額「20万円」は申告書第三表「65」へ、「本年分で差し引く株式等に係る譲渡損失の金額」の「20万円」は申告書第三表「87」へ、それぞれ転記します。


「本年分で差し引く株式等に係る譲渡損失の金額」とは、前年の譲渡損失(赤字)の金額である20万円のことです。

3、前年の確定申告書付表(株式等に係る譲渡損失等の金額の計算明細書)の数字を本年の確定申告書付表へ転記する

前年の譲渡損失「20万円」を本年の譲渡所得「20万円」から差し引く際の記入は次の通りです。

所得税の確定申告書付表記入例(2面)

所得税の確定申告書付表記入例(2面)

1年前の譲渡損失「20万円」は、下の行「本年の前年分」の行「C(前年分の付表の3の金額))」へ記入します。本年が黒字ですので、「H (株式等に係る譲渡所得等の金額から差し引く部分)」の金額は「20万円」です。20万円-20万円=0万円ですから、「8」番も0円となります。


「翌年以後に繰り越される株式等に係る譲渡損失の金額(5+7+8)」も0円を記入します。

4、計算明細書及び確定申告書付表の金額を申告書第三表へ転記。

所得税の確定申告書第三表記入例(左列)

所得税の確定申告書第三表記入例(左列)

所得税の確定申告書第三表記入例(右列)

所得税の確定申告書第三表記入例(右列)

最後に、先ほどの計算明細書及び確定申告書付表の金額を、申告書第三表へ転記します。あとは申告書第一表・第二表及び第三表の残りを完成させて提出してください。

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